大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)95号 判決

一、原告の主張する請求原因事実のうち、第一項から第三項までの事実は、当事者間に争いがない。

二、そこで、取消事由の有無について判断する。

(一) 取消事由(一)について

(1) 成立に争いのない甲第二号証によれば、引用例Yの装置は、事輪5、5を支持する左右の伝導ケース4、4がそれぞれシヤフト7を中心として回転できるように支持されているが、これら左右の伝導ケース4、4はそれぞれ独立して回転できるような構成とはなつておらず、扇形歯車11、12、ピニオン13、14、傘歯車17、18、19を介して連結されているから、一方の伝導ケース4がシヤフト7を中心として回転すれば、これに伴ない他方の伝導ケース4が必らず反対方向に回転して車輪の上下調節ができる構成となつていること、機体が傾斜した際、これを水平になるよう矯正しようとすれば、繋止装置を解放して回転把手20を回転できるような状態にしなければならないことおよび繋止装置の操作ハンドルであるロツド27と回転把手20とは、ともに左右の操縦ハンドルの間に連結杆によつて支持されていることがそれぞれ認められる。

(2) 原告は、引用例Yの装置は、機体が傾斜したとき、これを修正するために左右の車輪を上下させようとして繋止装置を解放すると機体の傾斜側の伝導ケース4が腰が抜けるように上向きに回動し、これにより他方の伝導ケース4が逆に下降するようになつて、機体は急激に傾斜側に転倒するようになるので、傘歯輪19が回転しないように回転把手20を強力に押え付けておく必要がある旨主張する。

しかしながら、引用例Yの装置がその走行中に傾斜地において機体が傾斜した場合、これを水平に戻るように矯正するため繋止装置を解放して伝導ケース4、4をシヤフト7の周りに回転できるような状態にすると、機体を転倒させようとする力のために傾斜側の機体は沈むようになつて伝導ケース4はシヤフト7の周りに上向きに回転する力を受けるわけであるが、しかし、このような力を受けても、引用例Yの装置では、前記のように一方の伝導ケース4がシヤフト7を中心として回転すれば必ず他方の伝導ケース4は反対方向に回転するような構成となつているから、反対側の伝導ケース4は下向きに回転する力を受け、下向きに回転することによつて車輪を下方に押し下げ、車輪は地面に固定されることになるので、一方の伝導ケースはそれ以上上向きに回転することはない。したがつて、それ以上左右の伝導ケースがシヤフトを中心として自由に回転するようになつたり、原告の主張するように腰の抜けた状態になることはあり得ない。そして、機体が傾斜しても反対側の車輪には機体の重量がかかるし、耕作地の傾斜度は通常二〇度以下と考えられるから反対側の車輪にかかる機体の荷重の減少は僅かであり、反対側の伝導ケースが下向きに回転して車輪を押し下げ機体を持ち上げる力が働いたとしても、その力は機体全体を転倒させるほど強いものとはとうてい考えられないのである。それ故、原告の前記主張は採用の余地がない。

(3) 原告は、また、引用例Yの装置では、機体の走行中に車輪を上下調節するには機体の操縦ハンドルと繋止装置と回転把手の三者を同時に操作しなければならないが、このことは実際上不可能であると主張する。

しかしながら、引用例Yの装置においては、前記のとおり繋止装置の操作ハンドルであるロツドと回転把手とはともに左右の操縦ハンドル杆の間に連結杆によつて支持されているから、機体の転倒や回行を阻止するために必ずしも操縦ハンドルを握つていなければならないものではなくロツドか回転把手かに力を加えることにより容易にこれをなすことができると思われる。また、前記のとおり引用例Yの装置では、回転把手の回転により左右の伝導ケース4、4が同時に反対方向に回転して車輪の上下調節ができる構成になつているから、繋止装置を解放してから回転把手の回転によつて機体を水平にするまでの時間は極めて僅かであり、走行中の左右車輪の上下調節には格別の支障はないものと考えられる。また、回転把手を回転させている間は、繋止装置を解放した位置に保持する必要があることはいうまでもないが、その保持手段としてボールと複数条の溝とからなる繋止装置を用いることが慣用技術であることは、原告もこれを認めるところである。したがつて、引用例Yの装置においてもこのような繋止装置を用いれば、必らずしも手によつて繋止装置をその解放位置に保持しておく必要はなく、一方の手で回転把手を保持し、他方の手で操縦ハンドルを握るようにすることができる。このような方式は引用例Yから当然に予測し得る範囲のことといつて差支えない。したがつて、この点に関する原告の主張もまた理由がない。

(4) それ故、引用例Yのものは左右の駆動車輪を機体の走行中において自由に操作できないという原告の主張は失当である。

(二) 取消事由(二)について

(1) 原告は、引用例Xのものにおいては左右の駆動車輪の上下調節は、停止中において左右各別に行うことができるのに対し、本願発明のものにおいては左右の駆動車輪の上下調節は、走行中において左右各別に操作できるという相違点(D)があると主張する。しかし、両者の相違は左右の駆動車輪の操作が停止中に行われるか走行中に行われるかどうかの点だけであるから、この相違点(D)は、審決の認定した相違点(A)の中に実質的に包含されているということができる。

したがつて、審決がこの点を看過しているという原告の主張は採用することができない。

(2) また、原告は、引用例Xのものは、走行中におけるエンドレス掘削体の地表に対する角度が調節できないのに、本願発明のものは、走行中におけるエンドレス掘削体の地表に対する角度が自由に調節できるという相違点(E)があると主張する。しかし、引用例Xのものも、機体の停止中とはいえ、左右の車輪の上下調節ができるものであることは前記のとおりであつて、車輪の上下調節を行なえば、その当然の結果として、掘削体(バケツト18を設けた無端帯17)の対地角度が調節されるのであるから、この相違点(E)も審決の認定をした相違点(A)の中に実質的に包含されているということができる。したがつて審決がこの点を看過したという原告の主張も理由がない。

三、以上のとおり、原告の主張はいずれも理由がないから、本件審決には原告主張の違法のかどはなく、したがつてその取消を求める原告の本訴請求は失当であるから棄却する。

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